紙器・段ボール箱製造の分野で「特定技能の人を採りたい」というご相談をいただくことが増えました。ただ、話を進める前に必ずお伝えしている数字があります。この区分の評価試験に合格した人は、直近4回を合計しても世界全体で20人だということです。
感覚の話ではありません。試験を実施している一般社団法人工業製品製造技能人材機構(JAIM)が、回ごとに結果を公表しています。その公表値をそのまま並べたのが、この記事です。
直近4回で、合格者は世界全体で20人
紙器・段ボール箱製造区分の特定技能1号評価試験は、日本・インド・インドネシア・フィリピン・ミャンマー・ベトナムの6か国で実施されています。次の表は、その6か国を合計した結果です。
| 実施回 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|
| 2025年度 第1ターム(7月) | 21人 | 5人 | 23.8% |
| 2025年度 第2ターム(11月) | 14人 | 4人 | 28.6% |
| 2025年度 第3ターム(2〜3月) | 14人 | 2人 | 14.3% |
| 2026年度 第1ターム(7月) | 51人 | 9人 | 17.6% |
| 4回の合計 | 100人 | 20人 | 20.0% |
出典:一般社団法人工業製品製造技能人材機構(JAIM)「製造分野特定技能1号評価試験結果」各回の結果概要。2026年9月3日参照。数値は実施6か国の合計で、国別の内訳は公表されていません。
4回で受験者100人、合格者20人。単純に均せば、1回の試験で世界のどこかに5人の合格者が生まれる計算になります。そのうち何人が段ボールの仕事を選び、日本のどの地域を希望し、そのうえで自社の条件と合うのか。「合格者が出てくるのを待つ」やり方では、受け入れは進みません。
受験者は3.6倍に増えた。それでも合格率は上がらなかった
注目していただきたいのは直近の2026年7月です。受験者が14人から51人へ、3.6倍に増えました。この区分に挑戦する人が増えていること自体は、業界にとって明るい材料です。
ところが合格率は17.6%で、前の回(14.3%)から大きくは戻っていません。受験する人が増えても、関門の高さは変わっていない、ということです。
同じ回の他の区分と、並べてみる
合格率14.3%という数字が高いのか低いのかは、単独では判断できません。同じ2025年度第3タームに実施された、製造分野の全区分を並べます。
| 区分(2025年度 第3ターム) | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|
| 金属表面処理 | 19人 | 9人 | 47.4% |
| コンクリート製品製造 | 24人 | 10人 | 41.7% |
| 電気電子機器組立て | 295人 | 99人 | 33.6% |
| RPF製造 | 3人 | 1人 | 33.3% |
| 機械金属加工 | 542人 | 162人 | 29.9% |
| 縫製 | 17人 | 5人 | 29.4% |
| 陶磁器製品製造 | 5人 | 1人 | 20.0% |
| 紡織 | 5人 | 1人 | 20.0% |
| 印刷・製本 | 12人 | 2人 | 16.7% |
| 紙器・段ボール箱製造 | 14人 | 2人 | 14.3% |
出典:JAIM「2025年度第3ターム 製造分野特定技能1号評価試験結果」。2026年9月3日参照。受験者数の少ない区分は、1人の合否で率が大きく動く点にご留意ください。
この回に限れば、紙器・段ボール箱製造は全区分のなかで最も低い合格率でした。ただし受験者が14人しかいない回の数字であり、これだけで「最も難しい区分」と断じることはできません。言えるのは、受験者の絶対数が少なく、合格者はさらに少ないという構造がこの区分にある、ということです。
分かっていること、分からないこと
公表資料から確実に読み取れるのは、次の点です。
- 学科試験・実技試験とも、日本語のみで実施される
- 実施国は6か国。ただし国別の内訳は公表されていない
- 合格者数は、この区分では1回あたり1桁で推移している
逆に、公表資料からは分からないこともあります。「ベトナムの合格者は何人か」「不合格の原因は学科か実技か」といった点です。当組合はこれらを推測で語らないことにしています。採用計画は推測ではなく、確認できた数字の上に立てるべきだと考えているためです。
もう一つの入口 ── 技能実習2号を良好に修了した方
ここまでは「試験を受けて合格する」ルートの話です。特定技能1号には、もう一つ入口があります。
対応する職種・作業で技能実習2号を良好に修了した方は、技能試験・日本語試験がいずれも免除されます。上の合格率を経ずに特定技能へ移行できるということです。自社に修了予定の実習生がいる企業にとって、この意味は小さくありません。
ただし、どの職種の修了でも免除されるわけではありません。修了した職種・作業と、移行先の分野・業務区分に対応関係があることが条件です。実習の職種によっては免除の対象外となるため、移行を前提に計画を組む前に、必ず対応関係をご確認ください。当組合は監理団体としても登録支援機関としても許可を受けていますので、実習中の段階からこの見通しをお示しできます。
採用計画に落とすと、どうなるか
合格率20%前後という数字を採用側の言葉に置き換えると、1人を採用するには、受験する人がおよそ5〜6人必要ということになります。しかも合格した全員が段ボールの仕事を選ぶわけではありませんから、実際の必要数はこれより増えます。
だからこそ当組合は、合格者を探すのではなく、受験する人そのものを増やす側に回る方針を取っています。現地でこの区分の求人を継続して出し、受験機会を増やすための協議を進めています。合格者を待つ限り、この分野の受け入れは広がらないと考えているためです。
もう一点、実務上の要点があります。試験は年に数回しかありません。次の回を逃せば、配属は半年から1年単位で後ろにずれます。候補者の面接が終わってから受験申込を考えるのではなく、申込枠を押さえる時期から逆算して動く必要があります。
次回の試験(ベトナム)
- 試験日:ハノイ 2026年11月9日(月)・10日(火) / ホーチミン 11月9日(月)〜11日(水)
- 申込開始:2026年9月17日(木)日本時間10時
- 申込締切:2026年11月4日(水)日本時間23時59分
出典:在ベトナム日本国大使館の告知(2026年9月3日参照)。日程・会場・受験料は変更されることがあります。お申し込みの際は必ず実施機関または大使館の最新の告知をご確認ください。
まとめ
紙器・段ボール箱製造の特定技能は、まだ人が動いていない分野です。直近4回で合格者20人という数字は、それを正面から示しています。
裏を返せば、いま受験者を増やす取り組みに関わる企業ほど、先に人を確保できるということでもあります。数字が小さいうちに動くか、合格者が増えるのを待つか。判断の材料として、この記事の表をお使いいただければ幸いです。
当組合は監理団体(許可番号 許1904000061)、登録支援機関(20登-005125)、有料職業紹介事業者(11-ユ-301303)として、技能実習からの移行と、海外からの直接採用の双方をお手伝いしています。どちらが自社に合うかの整理からご相談いただけます。