【2026年8月25日】外国人材ニュースまとめ|賃金不払は全国2.2万件・128億円(令和7年)——受入企業・監理団体がいま点検すべき賃金コンプライアンスの実務
2026年8月21日、厚生労働省が「令和7年(2025年)の賃金不払が疑われる事業場に対する監督指導結果」を公表しました。外国人材を受け入れる企業・監理団体・登録支援機関にとって、賃金不払や割増賃金の計算ミスは、単なる労務トラブルにとどまらず、特定技能の受入れ機関基準、技能実習・育成就労の許可や優良認定、在留諸申請の審査に直結するリスクです。今日は最新データをもとに、受入れ現場でいま点検すべき賃金コンプライアンスの実務を整理します。
ニュースの中身:令和7年(2025年)の賃金不払データ
労働基準監督署が対応した、賃金不払が疑われた事案の集計は次のとおりです。
- 事案の件数:22,605件(前年比+251件)
- 対象労働者:173,016人(前年比▲12,181人)
- 不払額の合計:128億5,782万円(前年比▲43億5,331万円)
労働基準監督署の指導により、令和7年中に解決した事案は次のとおりで、指導が入れば大半は是正(支払い)に至っています。裏を返せば、不備があれば高い確率で是正勧告・支払い命令につながるということです。
- 件数ベース:21,731件(96.1%)
- 労働者数ベース:167,828人(97.0%)
- 金額ベース:109億9,703万円(85.5%)
あわせて厚生労働省は8月19日にも「時間外労働等に係る相談・支援及び監督指導を見直します」と発表しており、賃金・時間外労働に関する監督指導を強化・重点化する流れが続いています。受入れ企業は「指摘されてから直す」ではなく、事前点検で先回りすることが重要です。
なぜ受入企業・監理団体にとって重要か
賃金不払(未払い賃金・未払い割増賃金を含む)は労働基準法違反です。外国人材の受入れでは、これが在留・許可の土台に影響します。
- 特定技能:受入れ機関(所属機関)は「労働・社会保険・租税に関する法令を遵守していること」等が基準です。労基法違反があると、新規受入れ・在留諸申請の審査に悪影響が及びます。
- 技能実習・育成就労:監理団体の許可、実習実施者・受入れ機関の要件、優良認定の評価に、法令違反や改善命令歴が響きます。悪質な場合は認定取消・受入れ停止に至ることもあります。
- 失踪・定着リスク:賃金トラブルは失踪や早期離職の大きな原因です。定着率の低下は、採用コストの再発生に直結します。
とくに外国人材の現場では、寮費・水道光熱費などの控除、時間外・深夜・休日の割増計算、10月に改定される最低賃金の3点で不備が出やすい傾向があります。
いま点検すべき賃金コンプライアンスの実務
① 労働時間の客観的把握
タイムカード・ICカード・PCログなど客観的な方法で始業・終業を記録していますか。自己申告のみ、または残業を切り捨てる運用は是正対象になりやすい箇所です。
② 割増賃金の計算
時間外は25%以上(月60時間超の部分は50%以上)、深夜(22時〜5時)は25%以上、法定休日は35%以上の割増が必要です。夜勤・交替制のある職場は、深夜割増の計上漏れに注意してください。
③ 最低賃金(10月改定)を下回っていないか
2026年10月に各都道府県の最低賃金が改定されます(全国平均の目安は1,176円)。発効日以降は新しい時給が適用されるため、技能実習生・特定技能外国人を含む全員の時給が、勤務地の新最低賃金以上になっているかを事前に確認・改定してください。固定残業代を含む場合は、割増部分を除いた基礎時給での判定が必要です。
④ 賃金からの控除(寮費・水道光熱費など)
法定控除(税・社会保険)以外の控除には、労使協定が必要です。寮費・水道光熱費は実費の範囲にとどめ、金額の根拠を説明できるようにしておきます。過大な控除は「実質的な賃金不払」と評価されるおそれがあります。
⑤ 賃金台帳・給与明細・雇用条件書の整合
雇用条件書(母国語併記)・賃金台帳・実際の支払額・給与明細が一致しているかを確認します。外国人本人が理解できる形で明示されていることも、トラブル防止の要点です。
⑥ 36協定の締結・届出・上限管理
時間外・休日労働をさせるには36協定の締結と労基署への届出が必要です。特別条項の適用回数(年6回まで)、単月100時間未満・複数月平均80時間以内など、上限規制の抵触見込みを月次で管理してください。
監理団体・登録支援機関の実務
監理団体・登録支援機関は、定期監査・定期面談・巡回のなかで、受入れ先の賃金支払状況(給与明細と実労働時間の突合、最低賃金・割増の確認、控除の妥当性)を点検し、記録に残すことが求められます。賃金不払の兆候を早期に把握し、是正を促すことが、自機関の許可・信頼の維持につながります。
企業の実務ポイント(今すぐ確認すること)
- 対象:外国人材を受け入れる全企業(特定技能・技能実習・育成就労)、監理団体、登録支援機関。
- 今すぐ:タイムカード等による客観的な労働時間の把握ができているか点検する。
- 割増:時間外25%/深夜25%/休日35%(月60時間超は50%)の計算漏れがないか確認する。
- 10月に向けて:勤務地の新・最低賃金(発効日)を確認し、全員の基礎時給が下回らないよう賃金改定を準備する。
- 控除:寮費・水道光熱費などの控除は労使協定+実費の範囲か、根拠資料を整える。
- 書類:雇用条件書・賃金台帳・給与明細・支払額の整合を確認(母国語での明示も)。
- 36協定:締結・届出の有無と、上限規制の月次管理を確認する。
- 監理・支援機関:定期監査・面談で受入れ先の賃金支払状況を突合し、記録に残す。
出典:厚生労働省「賃金不払が疑われる事業場に対する監督指導結果(令和7年)」(2026年8月21日公表)、厚生労働省 報道発表資料(2026年8月/8月19日「時間外労働等に係る相談・支援及び監督指導を見直します」)。数字・制度は公表時点のもの。個別案件の判断は所轄の労働基準監督署・専門家にご確認ください。